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「きっと男の子だよ、ディアン」
「違うよ、ジェイド! 絶対女の子だって!」

 似たような背丈の、5歳位の男の子二人が歩きながら話している。 空は晴れ渡っており、暖かな春の陽気の中、木々が風に揺れている。
 双子故に顔の作りは酷似しているが、色彩はまったく違っている。
 ジェイドと呼ばれた少年は、日に光るプラチナブロンドに、翡翠の瞳を持っている。 ディアンと呼ばれた少年は、黒曜石色の髪に、深い青の瞳を持っている。

「なんでそんなの分かるんだよ、ディアン」
「かあさまのお腹を触った時、なんだか優しい鼓動が聞こえたんだ、だからきっと女の子だよ!」
「ふーん、まあ、すぐに逢えるし」

 にこにこと笑いながら言う双子の弟にジェイドは少し拗ねたように言う。

「早く逢いたいな! クリスタルに!」
「水晶?」
「そうだよ、とうさまが女の子だったらそう名付けるんだって、ずっとそう決めてるんだって言ってた」
「どうしてだろ? とうさまやディアンみたいな黒髪だったら、どうするんだろ」
「とうさまがね、かあさまの涙はまるで水晶のようだからって」
「涙が、水晶?」
「うん、天国の涙みたいだったって」

 と、その瞬間。 城の方で小さな泣き声が聞こえ始めた。
 その声にディアンとジェイドは顔を見合わせ、走り出した。

「ジェイド様! オブシディアン様!」

 外に出ていた二人の皇子を呼びにきたであろう侍女が興奮に赤らんだ顔でこちらに走りよってくる。
 いつも冷静な侍女がここまで感情を表すのは珍しい、けれど今の二人にはその事に気づく余裕などなかった。

「女の子? 男の子? 今から会えるの? かあさまは!?」
「ティアイエル様はお休みになられていますが、姫様には―妹君には逢えますよ」
「やっぱり女の子だったんだ!」

 はしゃいだ声でディアンがそう叫ぶ。 そして一目散に走り出した背中を追うようにジェイドも走り出す。 いつもは城の中を走ると小言が飛んでくるが、今日は誰もそんな事は言わない。
 ただ微笑ましそうに駆ける二人の姿を眺めている。
 息を切らせながらも、足を緩めず二人は走り続けた。

 ――可愛い妹に逢うために。
12th/Jun/05

 

 

 

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