貴方に出会わなければ、こんな痛みを知らなかった。
貴方に出会ったから、この痛みを知れた。
貴方に出会わなければ、こんなに泣かなかった。
貴方に出会ったから、こんなに泣けなかった。
貴方に出会わなければ、貴方をこんなにも愛さなくてすんだ。
貴方に出会ったから……、こんなにも貴方を愛せた。
「ティアラ」
聞きなれた、低い声。
深い青と淡い青の優しい瞳が今だけはティアラを映している。
どうか、どこにも行かないで、とそう言えたならどんなに楽だろうか。
漆黒の髪は汗に濡れ、所々血に混じり流れていく。
「この戦いが終われば」
「アレク……」
言わないで、と言いたいのに、彼の瞳がそんなティアラの心を制す。
どこまでも静かな、覚悟を決めてしまった瞳。
「私はもう戻らないかもしれない」
「やめてっ……」
「そうなれば、お前は自由だ……国へ帰れ」
形の良い、薄い唇から語られたのは、残酷な言葉だった。 どうか夢であってと願っても、胸に走る痛みが想いを打ち砕く。
共に滅びても良いと思えるほど、貴方を愛しているのに。
戦争が……始まる。
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